アカデミック・ビュー Vol.04

《デザイン態度とディシジョン態度》

 

近年、デザイン思考が流行しています。みなさんの中にも「デザイン思考研修」を受けた方もいるでしょう。でも、デザイン思考のツールを活用する研修を受けても、そう簡単に創造的な問題解決ができるわけではありません。その理由の一つは、問題に対して、デザイン態度で取り組めていないからです。では、デザイン態度とは何でしょうか。

デザイン態度は、2004年にBolandCollopy[1]が提唱した概念です。彼らは、新しい大学棟の建設プロジェクトにおいて、建築士(デザイナー)の問題解決のアプローチが、ビジネスパーソンとは違うことに気づき、それを概念化しました。デザイナーのアプローチをデザイン態度、ビジネスパーソンのアプローチをディシジョン態度とし、対比的に描いています。

その違いは表を見てください。何らかの問題が発生すると、ディシジョン態度では、問題の原因を究明しようとします。しかし、デザイン態度では、それだけではなく、問題の再形成をしようとします。例えば、音がうるさいという事象が起きたとしましょう。ディシジョン態度では、音の発生源を突き止め、「どうすれば消音できるか」という問題を設定して、解決策を考えるでしょう、しかし、デザイン態度では、「どうすれば不快にならないか」という問題に置き換えて、心地よい音にする解決策を考えるかもしれません。また、解決策がいくつかに絞られた場合、ディシジョン態度では、それらの長所と短所を分析したうえで、最適な解決策を選択します。しかし、デザイン態度では、複数の解決策の長所を併せ持った第三の解決策を考えようとします。このように、デザイン態度とディシジョン態度は異なるアプローチであり、創造的な問題解決には、デザイン態度の方が力を発揮するでしょう。

トビラボでは、デザイン態度を高めるプログラムを開発しました。特に、デザイン態度では必須であるユーザーへの共感ができるようになるためのプログラムになっています。もちろん、シアトリカル・アプローチを応用しています。シアトリカル・アプローチは、創造性を育むこともできるのです。



[1] Boland, R. and F. Collopy (2004 ) managing as designing, Stanford University Press.